一緒に堕落しようね
1956年公開の『洲崎パラダイス赤信号』という映画がある。
いわゆる赤線地帯を舞台にした、作品だ。
※以下ネタバレ要素あり。
赤線という言葉自体に馴染みがないかもしれないが、半ば公認で売春が行われていた地域のことを指す言葉である。
以前あった『公娼制度』が1946年に廃止され、売春防止法が施行された1956年まで存在していた。
おおまかなあらすじを書くと、売春防止法が施行される直前の洲崎パラダイスが舞台。
義治と蔦枝の夫妻は、生活がままならないまま彷徨っていた。
とうとう所持金が残りわずかになり、2人はバスに乗って移動、洲崎弁天町のバス停で降りた。
だが、そのバス停のそばにある洲崎川を挟んだ先には、『洲崎パラダイス』があった。
過去に娼婦をしていた経験のある蔦枝は、義治に「橋を渡ったら、逆戻りじゃないか」と問う。
結局、蔦枝は橋のすぐ脇にある居酒屋「千草」で働くこととなる。
この話、実は赤線要素はほとんどと言っていいほどない。
あくまでも、人間がいかに弱く、脆い存在なのかということが、淡々と描かれている。
蔦枝は作中で、客としてきた男に気に入られて、同じ家で生活するといって飛び出していった。
だが、蔦枝には義治がいる。
はっきりいって、浮気以外のなにものでもない。
義治はそのことを知って大怒り。秋葉原に店を構えていることを知り、追いかけることに。
近くにアパートを借りたということを頼りに探しに出るが、見つけきれず洲崎に戻るというシーンがある。
いなくなったときにだけ、蔦枝のことを必死に探す義治に、わたしは心底ためいきをついてしまった。
ああ。この人も人間なんだな、と。
物語の締めくくりは、2人が洲崎を離れて勝鬨橋付近でまたあてのない移動をするシーンで終わる。
本当に救いがない。
無駄のない演出で、淡々と進んでいく物語が、わたしはとても好きでたまに見返しています。
今ではこの作品がアマゾンプライムで観れるので、時代の流れというのは、素晴らしいと感じた。
最後に、この作品の中で『洲崎神社』が登場する。
洲崎パラダイス自体は、売春防止法施工後にほとんど跡形もなく消えてしまった。
だが、今でも変わらず存在しているのは、洲崎神社である。
地下鉄東西線の東陽町が最寄りなので、機会があれば行ってみるのもよいかと思います。
住宅街の中にひっそりとあります。
今日はここまで。